↑ 菜食でよく使われる素材は大豆由来のものですが、「美素食-meisushi-」ではもうひとつ、キノコを重要な素材としてとらえています。たとえば「ヤマブシタケ」は肉の繊維を感じられる味わい。「シロキクラゲ」はクラゲやイカなどの見立てに。キノコ類はアミノ酸、ミネラル類、各種ビタミンなどが豊富で、デトックスや抗酸化作用など、滋養の面からも効用が認められています。まさに養生の食材です。

 ↑「美素食-meisushi-」は、動物性でない素材を動物性の味わいに「もどく」(見立てていく)料理です。その工夫のプロセスに造形の妙も織り込み、見て美しく、食べて発見のある料理を作っていきます。

 ↑ 大きな丸蒸籠を使ったプレゼンテーションは「美素食-meisushi-」ならではのものです。底に蓮の葉を敷き、料理を並べて蒸し上げます。お料理を召し上がっていただくにつれて、蓮の葉が乾き、最後にくるりと丸まって、食事の終わりを告げる―その時間と、見た目の面白さも味わいのうちです。

 ↑ 丸蒸籠のプレゼンテーションは、茶事にも合う形です。写真は京都で開かれた「お初釜」。蒸しあげた丸蒸籠から上がる、もくもくとした湯気が、まだ寒い時分のお席を温めてくれるようです。

 ↑ 造形作家としての「目」と「手」がいちばん出るのがお菓子づくりです。月餅の型を使ったローゼルと豆乳のゼリー(右上)、白きくらげの蜜煮(右下)など、素材に向き合いながら、味、色、かたち、すべてに創意を凝らしたお菓子たちです。

 ↑ 工芸のプロデュース会社「Kiwakoto」が清水焼の作家と組み、「花」をモチーフにした焼き締め皿を制作されました。そのお披露目会では、百合根や青芥子の実など、花に関連した素材でメニューを構成しました。花形をしたお皿のふちが、とりわけ美しく、料理と調和をしています。

 ↑ 名古屋のギャラリーにおいて「結」というタイトルで、ジュエリー展示とともに、大きな長テーブルを囲む素食会を催しました。メニュー表をくるりと丸めて、「結」の字の一部にして、それを結ぶ紐をみなさんと解いてから、食事が始まる趣向です。わいわいとした雰囲気を活かすために、素食は料理箱仕立てにしています。

 ↑ 臨済宗の名門寺院、建仁寺両足院を舞台に,副住職の伊藤東凌氏のキュレーションのもと、陶芸家の和田山真央氏とともに、「美素食-meisushi-」の表現を極めた、アート・インスタレーションを行いました。赤、青のヴェールは動脈、静脈の見立てで、その内部に人間の身体を構成する要素が収まっているという解釈です。

 ↑ 造形作家の松永智美は、竹・麻・箔・漆など日本の素材を使ったジュエリーを制作しています。「美素食-meisushi-」は、中華圏の菜食にインスピレーションを得た造形作家が、みずからの美意識に、半世紀にわたる食体験を加えて、「ART & EAT」を融合した、ほかにない、新しい食体験です。